愛媛県大洲市、肱川のほとりに聳える大洲城跡。
その歴史は古く、鎌倉時代の末期に伊予国の守護として遣わされた宇都宮氏が大洲を拠点とし城を築いたことから始まります。
戦国時代には築城名人の藤堂高虎や賤ヶ岳の七本槍の一人として知られる脇坂安治などが入城し城郭の拡張、改築に取り組みました。
天守は明治時代中頃に取り壊されてしまいましたが、江戸時代後期に建て直された台所櫓、高欄櫓、苧綿櫓、三の丸南隅櫓は現存し国の重要文化財に指定されています。
それでは、大洲城の歴史をもう少し詳しく見ていくことにしましょう。
大洲城へのアクセス
松山自動車道(大洲道路)の大洲肱南ICを下りて大洲市街方面に向かいます。国道441号線を進み片原町交差点を直進し突き当りを右折すると大洲城の案内板が現れるので従いましょう。城のすぐ下に有料駐車場があります。
JR伊予大洲駅から徒歩でも行けます。30分程で到著するはずです。タクシーを利用すれば交通状況にもよりますが、10分かかりません。
比志城が大洲城の前身?
元和以前は大洲を大津と書す昔は比志ノ城といひ地藏ヶ岳の城ともいふ
伊豫温故録 大洲城より
大洲城には『比志城、地蔵ヶ嶽城、大津城』という別称があります。
伊予国の大名である河野氏について書かれた予章記に比志城の名が記されています。
同月平家矢島ヨリ。田内左衞門尉則能。三千余騎發向スル時。同二十五日。喜多郡比志ノ城ニテ遂合戰。五ヶ日有テ則能曳退。
群書類従 第拾四輯 豫章記より
これは源平合戦で源氏に味方した河野通信が比志城に立て籠もり平家と戦ったという場面です。
かつて大洲は喜多郡にありましたが、『比志ノ城』が現在の大洲城の位置にあったかどうかは判りません。
地蔵ヶ嶽に築かれた城
地蔵ヶ嶽城と呼ばれる理由は、鎌倉時代末期に伊予国の守護として入封した宇都宮豊房が地蔵ヶ嶽に城を築いたからです。
大洲城下大河流れて、長濱へ下る四里八町有、逢瀬柴二三里過て、多田の町あり伊達領なり、皆上り下り川舟あり、城下中村舟渡所々あり、淵數多あり、城下地藏が淵、昔是より地藏出現ゆへに名づく、
豫陽郡郷俚諺集 喜多郡より
此城山を地藏ヶ岳といひ城ノ下の淵を地藏淵といふ是は往古淵の上城山の半腹岩の上に石地蔵を安置し有しゆへ斯く名付といふ築城の頃中村渡塲の上に熊野權現を勸請して當城鬼門の守護とす
伊豫温故録 大洲城より
宇都宮豊房から始まる伊予宇都宮氏は代々大洲城を居城とし、戦国時代の毛利氏による伊予侵攻を受けるまでの約230年間、この一帯を支配しました。
大津城から大洲城へ
伊予宇都宮氏以後は城主が目まぐるしく移り変わります。
1585年、小早川隆景(毛利氏一門)
1587年、戸田勝隆(豊臣氏家臣)
1595年、藤堂高虎(元豊臣・徳川氏家臣)
1609年、 脇坂安治(元豊臣・徳川氏家臣)
1617年、加藤貞泰(徳川氏家臣)
大洲城は元来、近くに大きい津(肱川の河口部分か?)があったことから大津城と呼ばれていました。大洲城の公式サイトに改称されたであろう時期についての説明が書かれていましたので引用します。
大洲城天守の基本設計を行った(故)宮上茂隆氏は、脇坂安治が当天守を州本から移築し併せて地名を大津から大洲に変更したのではないかと推定しています。
改称した理由は定かではありませんが、滋賀県の大津と被って紛らわしいので、脇坂安治が洲本(淡路島)から移封してきた際に『津』を『洲』に変えたという説があるようです。
大洲城と城下町の原型は藤堂高虎、脇坂安治の時代に形成されたと云います。そして、加藤貞泰の入封以降、明治時代に至るまで加藤氏が大洲藩を治めることになります。
加藤清正(熊本藩)、加藤嘉明(松山藩)、加藤貞泰(大洲藩)。
なんか紛らわしいと思うのは私だけでしょうか?
嘉明と貞泰にはちょっとした繋がりがあります。加藤貞泰の祖父・景泰が加藤嘉明を見出して秀吉に推薦したという逸話があるそうです。嘉明はそれが理由で加藤を名乗ったとする説もあります。
清正と嘉明は秀吉の子飼い武将繋がり。二人とも賤ヶ岳の七本槍のメンバーに数えられます。ちなみに1609年に大洲城主になった脇坂安治もメンバーの一人です。
大洲城の人柱伝説
大洲城には人柱の伝説が残っています。
川に面する石垣の工事が難航したため、人柱を立てることになりました。『おひじ』という若い女子が犠牲になり、無事石垣が完成するというお話です。
肱川の名前はこの伝説から来ているといいます。
豫章記が間違っていなければ平安時代後期には『比志(ひじ)』という名前があったことになります。
『おひじ』はいつの時代の人なのか?
終わりに
写真の建造物は左から高欄櫓(重文)、天守(復元)、台所櫓(重文)です。
大洲城には計4棟の重要文化財があるのですが、残りの2棟(苧綿櫓、三の丸南隅櫓)は日が暮れてしまい撮影出来ませんでした。
もう少し時間に余裕をもって旅を楽しみたいものです。
おしまい!